SAP-C02-096 · セクション 11 / タスク 2.6
RightsizingとManaged ServiceのCost Trade-off
適正サイズ化 / マネージドサービス / 運用負荷 / インフラストラクチャコスト / Labor コスト / 総コスト
コスト最適化では、
AWSの月額料金が安いだけで候補を選ぶと、判断を誤ることがあります。
例えば、
セルフマネージド構成
→ AWS料金は低い
→ パッチ、バックアップ、障害対応などの運用工数が大きい
マネージドサービス
→ AWS料金は高い
→ 一部の運用作業をAWSへ委譲できるという場合があります。
そのため、
直接AWS料金
+
運用工数を同じ比較範囲へ入れ、
要件を満たしたうえで
総コストがどう変わるかを判断します。
ゴール
最終的に、
安いリソースを探すだけではなく、
適正サイズ化された直接AWS料金
+
運用オーバーヘッド
+
運用工数コストから、
セルフマネージド
vs
マネージドサービスの総コストを比較できることがゴールです。
1. 比較対象は要件適合済みの候補とする
性能・可用性・セキュリティなどの必須要件による候補選定は既習です。
ここでは、
必須要件を満たしていることを前提に、
セルフマネージド案
vs
マネージドサービス案のコスト Trade-offを比較します。
したがって、この先で扱うのは、
どちらが要件を満たすかではなく、
要件を満たす候補について
直接料金と運用コストを
どう公平に比較するかです。
2. 適正サイズ化してから比較する
セルフマネージド構成とマネージドサービスを比較するとき、
現在の過剰な構成
vs
最適化された新構成を比べると、公平な比較になりません。
例えば、
現在のEC2
8 vCPU
実際に必要なのは4 vCPU
候補マネージドサービス
必要量に合わせて4 vCPU相当なら、
現在の8 vCPU EC2
vs
4 vCPU相当のマネージドサービスだけで料金差を判断しません。
先に、
セルフマネージド案
↓
要件を満たす最小構成へ適正化
マネージドサービス案
↓
同じ要件に合う容量へ適正化します。
その後にコストを比較します。
3. 直接AWS料金と総コストを分ける
ここでは、
直接AWS料金を、
EC2
EBS
マネージドデータベース
その他の利用サービスなどAWSから直接発生する継続的な料金として考えます。
一方、
総コストには、比較範囲に応じて運用工数も含めます。
基本形は、
総コスト
=
直接AWS料金
+
運用工数コストです。
必要な継続費用が他にもある場合は、同じ比較範囲へ追加します。
重要なのは、
直接AWS料金
≠
必ず総コストという点です。
4. 運用オーバーヘッドを作業へ分解する
「運用が大変」という表現だけではコストモデルへ入りません。
運用オーバーヘッドを、実際の作業へ分解します。
例えばセルフマネージドデータベースなら、
OSパッチ適用
データベースパッチ適用
バックアップ運用
復元テスト
監視
障害対応
容量管理
HA構成の保守
フェイルオーバー確認などがあります。
重要なのは、
作業名
↓
頻度
↓
1回あたりの工数まで落とすことです。
例えば、
パッチ適用
2時間 × 月1回
バックアップ確認
0.5時間 × 月4回
定常監視・保守
8時間 / 月なら、
月間運用工数
=
2
+
0.5 × 4
+
8
=
12時間のようにモデル化できます。
5. 運用工数をコストへ変換する
比較するためには、
時間を、
コストへ変換します。
基本形は、
運用工数コスト
=
Σ
(
作業回数
×
1回あたり工数
×
比較用時間単価
)です。
例えば、
月間運用工数
20時間
比較用時間単価
50 USD / 時間なら、
20 × 50
=
1,000 USD / 月です。
これによって、
AWS料金
+
運用工数を同じ単位で比較できます。
6. 既習の責任分担を「残存運用工数」へ変換する
どの作業がAWS側へ移り、どの作業が顧客側に残るかという責任分担そのものは既習です。
ここでは、その結果を、
何時間削減できるかへ変換します。
例えば、現在の月間運用工数が、
OS / 基盤パッチ 4時間
基盤バックアップ運用 3時間
アプリケーション運用 5時間
アクセス管理 2時間なら、
合計14時間 / 月です。
マネージドサービス採用後に、
OS / 基盤パッチ
基盤バックアップ運用の7時間が顧客運用から外れ、
アプリケーション運用
アクセス管理の7時間が残るなら、
削減工数
14 - 7
=
7時間 / 月です。
比較用時間単価が50 USDなら、
削減される運用工数コスト
=
7 × 50
=
350 USD / 月となります。
つまり、
責任分担
↓
削減される作業時間
↓
残る作業時間
↓
Labor コストへ変換することがここでの判断です。
7. マネージドサービスの料金プレミアムと運用削減を比較する
マネージドサービスは、セルフマネージド構成より直接料金が高い場合があります。
しかし、
直接料金が高い
=
総コストも高いとは限りません。
例えば、
セルフマネージド
直接AWS料金
900 USD / 月
運用工数
18時間 / 月
時間単価
50 USDなら、
900
+
18 × 50
=
1,800 USD / 月です。
マネージドサービス
直接AWS料金
1,350 USD / 月
運用工数
4時間 / 月
時間単価
50 USDなら、
1,350
+
4 × 50
=
1,550 USD / 月です。
直接料金だけを見ると、
マネージド
+450 USDですが、
運用工数は、
14時間削減
=
700 USD相当です。
そのため総コストは、
1,800
-
1,550
=
250 USD / 月マネージドサービスの方が低くなります。
8. 損益分岐となる運用工数を考える
直接料金の差から、
どれだけ運用工数を削減できれば
マネージドサービス側が有利になるかも考えられます。
例えば、
マネージドサービスの追加料金
400 USD / 月
時間単価
50 USD / 時間なら、
400 ÷ 50
=
8時間です。
つまり、
月8時間より多く
運用工数を削減できるなら、他の条件が同じ場合、
運用工数を含む総コストではマネージドサービス側が低くなる可能性があります。
9. 削減時間と現金削減額を混同しない
社内エンジニアの運用時間が、
20時間
↓
5時間になったとしても、
15時間 × 時間単価
=
そのまま現金支出削減になるとは限りません。
例えば社員の給与が固定なら、
給与支出そのものは変わらない場合があります。
一方で、
障害改善
自動化
開発
技術的負債の解消へ15時間を振り向けられます。
そのため、
直接キャッシュ削減と、
人的キャパシティの創出を区別します。
比較用の人件費として金額化することはできますが、
工数削減額
=
必ず給与支出削減額とは扱いません。
10. マネージドサービスでも適正サイズ化は必要
マネージドサービスを採用したからといって、
適正サイズ化が不要になるわけではありません。
サービスによっては、
インスタンスサイズ
ストレージ
スループット
容量
プロビジョニング値などを設定します。
需要に対して過剰な設定なら、
マネージドサービス
+
過剰プロビジョニングになる可能性があります。
したがって、
マネージドサービスへ移行
↓
終わりではなく、
マネージドサービス
↓
設定可能な容量を確認
↓
需要へ適正化します。
セルフマネージドとマネージドの両方を適正化してから比較することが重要です。
11. 適正サイズ化そのものにもコストがある
適正サイズ化で削減できる料金だけでなく、
分析
変更
テスト
リリース
監視にも工数が必要です。
例えば、
削減額
30 USD / 月
残存期間
3か月なら、
期待削減額
90 USDです。
一方、
変更・検証工数
600 USD相当なら、
600 USDを使って
90 USD削減となります。
この場合、
技術的には適正サイズ化できるとしても、
経済的に優先すべきかは別判断です。
考え方は、
残存期間中の削減効果
-
最適化に必要な工数です。
12. 運用工数は現在値ではなく将来状態で比較する
比較するとき、
現在のセルフマネージド運用工数だけを見るのではなく、
候補を採用した後の運用状態をモデル化します。
例えば、
セルフマネージド案
自動化を追加後
10時間 / 月
マネージド案
5時間 / 月なら、現在の、
25時間 / 月とマネージド案を比較するのではなく、
10時間
vs
5時間を比較します。
直接料金と同じように、
各候補を合理的に最適化した状態を比較します。
13. 比較期間を揃える
直接料金が、
月額なのに、運用工数が、
年間では比較できません。
例えば、
直接AWS料金
1,000 USD / 月
年間運用工数
120時間なら、年間へ合わせて、
AWS料金
12,000 USD / 年
運用工数
120時間 / 年として比較します。
または両方を月額へ変換します。
重要なのは、
同じ比較期間を使うことです。
14. 比較表を作る
例えば、同じ要件を満たす2案を比較します。
| 項目 | セルフマネージド | マネージド |
|---|---|---|
| 適正化後の直接AWS料金 | 900 USD/月 | 1,350 USD/月 |
| 運用工数 | 18時間/月 | 4時間/月 |
| 比較用時間単価 | 50 USD | 50 USD |
| 運用工数コスト | 900 USD/月 | 200 USD/月 |
| 総コスト | 1,800 USD/月 | 1,550 USD/月 |
この場合、
最も安いAWS料金
→ セルフマネージド
最も低い総コスト
→ マネージドとなります。
どの数字を最適化しているのかを混同しないことが重要です。
15. 代表的なアンチパターン
| アンチパターン | 問題 |
|---|---|
| AWS請求額だけで候補を選ぶ | 運用工数を無視する |
| 現在の過剰構成と適正化済み候補を比較する | 比較条件が不公平 |
| マネージドサービスなら運用工数を0にする | 顧客側に残る作業を無視する |
| 工数削減をすべて現金削減として扱う | 人的キャパシティとキャッシュを混同する |
| マネージドサービスは適正サイズ化不要と考える | 過剰キャパシティを残す可能性がある |
| 小さな削減機会へ大きな変更工数を投入する | 最適化自体の費用を無視する |
| 比較期間を揃えない | 月額と年間値などを誤って比較する |
16. SAP-C02での判断フロー
1. 要件適合済みの候補を比較対象とする
2. 各候補を適正サイズ化
↓
セルフマネージド
マネージドサービス
3. 直接AWS料金を算出
4. 運用作業を分解
↓
作業
頻度
工数
5. 各候補で残る運用工数を算出
6. 運用工数を比較用コストへ変換
7. 同じ期間で
直接AWS料金
+
運用工数コスト
を比較
8. 削減工数が
キャッシュ削減か
キャパシティ創出か確認
9. 適正サイズ化や移行に必要な
変更工数も削減効果と比較
10. 総コスト上も適切な案を選択まとめ
コスト最適化では、
最も月額料金が低いだけで判断しません。
まず、
各候補を
要件に合うサイズへ適正化します。
そのうえで、
直接AWS料金
+
運用工数コスト
=
比較する総コストとして評価します。
マネージドサービスでは、一部の運用オーバーヘッドをAWSへ移せる場合があります。
重要なのは責任分担そのものを覚え直すことではなく、
移る作業
↓
削減できる工数
残る作業
↓
残存運用工数としてコストモデルへ変換することです。
そのため、
直接料金は高い
+
運用工数は小さい結果として、
総コストは低いということがあります。
逆に、
既に高度に自動化され
運用工数が小さい場合は、セルフマネージド構成の方が低コストになる可能性もあります。
また、
削減工数は必ずしも、
現金支出削減ではありません。
最後に、
適正サイズ化による削減額と、
変更・検証に必要な工数も比較します。
判断するのは、
AWS料金だけではなく、
要件を満たすために
組織全体として必要な継続コストです。
主要AWS公式資料
- AWS Certified Solutions Architect - Professional SAP-C02 Exam Guide — Task 2.6
- AWS Well-Architected Framework — COST 5: How do you evaluate cost when you select services?
- AWS Well-Architected Framework — COST05-BP03 Perform a thorough analysis of each component
- AWS Well-Architected Framework — COST 6: How do you meet cost targets when you select resource type, size and number?
- AWS Well-Architected Framework — COST06-BP01 Perform cost modeling
- AWS Well-Architected Framework — Select the correct resource type, size, and number
- AWS Compute Optimizer User Guide