SAP-C02-135 · セクション 15 / タスク 3.4
Disaster Recovery Strategyを再評価する
RTO / RPO / 現在のDR / 復旧テスト / フェイルオーバー / フェイルバック / DRギャップ
災害復旧(DR)戦略は、一度決めて終わりではありません。
以前の評価時点から、
ビジネス要件
ワークロード規模
アプリケーション構成
依存関係
データ構成
復旧環境のいずれかが変われば、以前取得した復旧テスト結果が、現在のDR戦略を証明する材料として使えなくなることがあります。
このページでは、RTO / RPOの意味、DR方式の比較、復旧テスト、フェイルオーバー、フェイルバックの実施方法は既習として扱います。
ここで判断するのは、
以前のDR評価
↓
その後の変更
↓
どの評価証拠がまだ有効か
↓
どの部分だけ再評価が必要か
↓
現在のDRギャップは何かです。
ゴール
DRを最初から設計し直すのではなく、
現在のRTO / RPO
+
現在のDR構成
+
以前取得した評価結果
+
評価後に発生した変更を比較し、
以前の証拠をそのまま利用できる
一部だけ再評価が必要
DR戦略そのものの見直しが必要のどれに該当するか判断できるようにします。
1. 再評価の基準日は「最後に証明した時点」
DR戦略を再評価するときは、まず、
最後に現在のDR能力を
有効に証明できたのはいつかを確認します。
例えば、
2025年
RTO = 60分
RPO = 15分
復旧テスト
RTO = 42分
RPO = 8分だったとします。
この結果から証明できるのは、
その時点の要件
+
その時点の構成に対してDR戦略が成立していたことです。
その後の変更まで自動的に保証するものではありません。
2. 以前の証拠が今も有効かを確認する
再評価では、
以前の復旧テスト結果があるかだけではなく、
その結果を取得した後に
何が変わったかを確認します。
例えば、
以前の復旧テスト
↓
成功
その後
↓
認証基盤を変更
新しい外部依存サービスを追加
データ構成を変更
ワークロード規模が大幅に増加しているなら、以前のテスト結果が現在構成をすべて証明しているとはいえません。
重要なのは、
テスト結果が古いという日付だけではなく、
その後の変更が
以前証明した復旧経路へ影響するかです。
ワークロード規模の増加も、この「評価後に発生した変更」の一例として扱います。
3. 要件変更は以前の合格判定を無効にすることがある
構成が変わっていなくても、RTO / RPOが変われば再評価が必要です。
例えば、
以前
RTO = 60分
RPO = 15分
実績
RTO = 40分
RPO = 8分なら、以前は目標達成です。
しかし現在の要求が、
RTO = 15分
RPO = 2分へ変更された場合、
構成変更なし
+
以前は合格でも、現在要件を満たしている証拠にはなりません。
つまり、
同じDR構成
≠
同じ評価結果です。
評価基準そのものが変われば、現在の基準で再評価します。
4. 変更がどの復旧経路へ影響するかを対応付ける
すべての変更がDR全体を無効にするとは限りません。
例えば、
認証サービスを変更した場合、
フェイルオーバー後
↓
利用者が復旧環境へログインする経路には影響する可能性があります。
一方、その変更が、
復旧環境から通常環境へ戻す
データ同期経路に影響しないなら、以前のフェイルバック評価の一部は引き続き利用できる可能性があります。
したがって、
変更あり
↓
全部最初から再テストと機械的に判断するのではなく、
変更
↓
影響する復旧経路
↓
無効になった評価証拠を対応付けます。
5. 「変更された部分」と「証拠が古くなった部分」を対応付ける
再評価では次のように整理できます。
| 変更 | 影響する可能性がある評価 |
|---|---|
| RTO / RPO変更 | 現在のDR全体 |
| 復旧先アプリケーション構成変更 | フェイルオーバー後の業務復旧 |
| 新しい認証・外部依存追加 | エンドツーエンドのフェイルオーバー |
| データ構造・データストア変更 | データ復旧、フェイルオーバー、フェイルバック |
| ワークロード規模増加 | 実際の復旧時間に関する既存証拠 |
| 通常環境への復帰経路変更 | フェイルバック |
| 変更なし | 既存証拠を継続利用できる可能性 |
ポイントは、
変更そのものと、
その変更によって
何の証拠が無効になったかを分けることです。
6. フェイルオーバーとフェイルバックの証拠を別々に扱う
DR戦略全体に変更があっても、
フェイルオーバーの証拠と、
フェイルバックの証拠が同じタイミングで無効になるとは限りません。
例えば、
データベース構成変更
↓
変更後にフェイルオーバーテスト実施
↓
成功
しかし
フェイルバックテストは変更前が最後なら、
フェイルオーバー
→ 現在構成で証明済み
フェイルバック
→ 現在構成では未証明と整理します。
DRテストをしたことがあるという一括評価ではなく、
現在構成について
どの経路まで証明済みかを確認します。
7. DRギャップは「現在要求」と「現在有効な証拠」の差から探す
再評価では、
以前成功したかではなく、
現在の要求と、
現在も有効な証拠を比較します。
例えば、
現在RTO
20分
最後に有効な実測
18分で、その後に復旧経路へ影響する変更がなければ、既存証拠を利用できる可能性があります。
一方、
実測18分
↓
その後アプリケーション構成変更
↓
変更後の復旧時間未測定なら、
現在RTOを満たしていることを
現在証明できていないこと自体がDRギャップです。
8. 「未達」と「未証明」を区別する
再評価では、この2つを混同しません。
未達
=
現在の評価結果が
目標を超えている一方、
未証明
=
以前は目標を満たしたが
その後の変更により
現在も満たすことを証明できないです。
例えば、
RTO 15分
最新実測
22分なら明確な未達です。
一方、
以前の実測
10分
その後
復旧経路を変更
変更後テストなしなら、
15分を超えると判明したわけではありません。
しかし、
現在も15分以内という証拠が失われています。
この未証明状態もDRギャップとして扱います。
9. AWS Resilience Hubで構成変化やドリフトを確認できる
AWS Resilience Hubでは、レジリエンスポリシーへ目標RTO / RPOを設定し、現在のアプリケーション構成に対する推定ワークロードRTO / RPOを評価できます。
さらに評価時には、以前の成功した評価と比較して、
アプリケーションポリシーのドリフト
リソースの追加 / 削除
推定RTO / RPOのドリフトなどを確認できます。
例えば、
前回評価
↓
ポリシー準拠
その後
↓
リソース追加
構成変更
今回評価
↓
ポリシードリフト検出なら、
以前準拠していたという結果をそのまま現在へ適用しません。
変更後の構成を再評価し、現在の目標に対する状態を確認します。
10. AWS Resilience Hubのドリフトは再評価のきっかけとして使う
AWS Resilience Hubで、
Changes detectedや、
Driftedといった状態が確認された場合、
以前の評価が失敗していたという意味に限定して考えません。
重要なのは、
以前評価したアプリケーションと、
現在評価すべきアプリケーションの間に差があることです。
入力ソースへリソース追加・削除などのドリフトがある場合は、現在のリソースを取り込み、公開・再評価して、現在構成に対する評価結果を取得します。
11. 再評価した結果、変更不要でもよい
再評価の目的は、
必ずDR戦略を変更することではありません。
例えば、
RTO / RPO変更なし
復旧経路へ影響する構成変更なし
現在のワークロード規模でも
既存結果を利用できる
フェイルオーバー / フェイルバックの
必要な証拠も現在有効なら、現在のDR戦略を維持できます。
再評価とは、
変更する作業ではなく、
現在も妥当であることを
確認する判断です。
12. 再評価の流れ
現在のRTO / RPOを確認
↓
最後に有効なDR評価を確認
↓
その評価後の変更を洗い出す
↓
各変更が影響する復旧経路を特定
↓
無効になった評価証拠を特定
↓
必要な部分だけ再評価
↓
現在要求と現在有効な証拠を比較
↓
DRギャップを特定
↓
必要なら戦略を改善中心となる判断は、
何が変わったか
↓
何の証拠が古くなったかです。
13. 混同ポイント
| 誤った判断 | 再評価時の判断 |
|---|---|
| 一度成功した復旧テストは永久に有効 | 評価後の変更が復旧経路へ影響するか確認する |
| 構成が同じなら再評価不要 | RTO / RPO変更や規模増加も確認する |
| 変更が1つあればDR全体を最初からやり直す | 変更の影響範囲に応じて証拠の有効性を判断する |
| フェイルオーバー成功ならフェイルバックも現在有効 | それぞれ現在構成で証明されているか分けて確認する |
| 目標未達だけがDRギャップ | 現在目標を満たす証拠が失われた「未証明」も確認する |
| 以前AWS Resilience Hubで準拠なら現在も準拠 | 構成変更やドリフト後は現在構成を再評価する |
| 再評価したら必ずDR方式を変更する | 現在要求を満たすなら既存戦略を維持できる |
14. SAP-C02での判断フロー
既存DR戦略あり
↓
最後に有効な評価はいつ?
↓
その後に何が変わった?
├─ RTO / RPO
├─ アプリケーション
├─ 依存関係
├─ データ
├─ 復旧環境
└─ ワークロード規模
↓
その変更は
どの復旧経路へ影響する?
↓
以前のどの証拠が無効になった?
↓
必要な部分だけ再評価
↓
現在の要求を
現在有効な証拠で満たせる?
│
├─ はい
│ ↓
│ 現在のDR戦略を維持可能
│
└─ いいえ / 未証明
↓
DRギャップを特定
↓
必要な部分を改善15. このページで扱わないこと
ここでは、
RTO / RPOの定義方法
バックアップ / 復元
パイロットライト
ウォームスタンバイ
マルチサイト
などのDR方式の基本比較
復旧テストの具体的な実施手順
フェイルオーバーの具体的操作
フェイルバックの具体的操作
データレプリケーション方式の設計
サービスクォータ不足への対応は扱いません。
このページで完成させるのは、
以前のDR評価
↓
その後の変更
↓
証拠の有効範囲を再判定
↓
現在のDRギャップを特定
↓
維持 / 改善の必要性を判断することです。
まとめ
DR戦略を再評価するときは、
以前成功したかだけを確認しません。
最後に有効だった評価
+
その後の変更
+
変更が影響する復旧経路
+
現在も有効な評価証拠を確認します。
最も重要なのは、
何が変わったか
↓
何の証拠が古くなったかを対応付けることです。
現在要求を満たしていないだけでなく、
以前は満たしていたが
現在も満たすことを証明できない状態もDRギャップとして扱います。
主要AWS公式資料
- AWS Certified Solutions Architect - Professional(SAP-C02)試験ガイド — タスク 3.4
- AWS Well-Architected Framework — Plan for Disaster Recovery
- AWS Well-Architected Framework — Test disaster recovery implementation to validate the implementation
- AWS Resilience Hub — Resiliency policies
- AWS Resilience Hub — Reviewing assessments reports
- AWS Resilience Hub — Drift detection
理解確認
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