SAP-C02-138 · セクション 16 / タスク 3.5
既存環境のCost Baselineを把握する
Current Cost / Usage / Service Cost / Cost Trend / Cost Driver / Baseline
コスト最適化を始める前に、既存環境の状態を比較可能な基準として残します。
例えば、
最適化前
100万円 / 月
最適化後
80万円 / 月となっていても、
対象アカウントが違う
比較期間が違う
使用量が違う
一時的な料金が含まれていたなら、20万円の差をそのまま最適化効果とは判断できません。
このページでは、既習のコスト分析結果を、
現在コスト
+
使用量
+
サービス別コスト
+
コスト推移
+
主要なコスト要因
+
比較条件として固定し、既存環境のコストベースラインを作ります。
ゴール
最適化前の状態について、
何を対象にしたか
どの期間を使ったか
どのコストを記録したか
どの使用量を対応付けたか
どの変化を通常状態として扱ったか
どの一時的要因を分離したかを明確にします。
最終的には、
同じ条件で
後から再取得できる状態を作ることがゴールです。
1. このページではまだ最適化策を選ばない
この段階では、
インスタンスを小さくする
Savings Plansを購入する
Spot Instancesへ移行する
ネットワーク構成を変更するといった改善策は決めません。
先に、
変更前の状態を固定します。
ベースラインがなければ、変更後に、
本当にコストが下がったのか
利用量が減っただけなのか
別サービスへコストが移ったのかを切り分けにくくなります。
2. まず対象範囲を固定する
コストベースラインでは、
AWS Organizations全体
特定AWSアカウント
特定ワークロード
特定リージョン
特定サービスのどこまでを対象にしたか記録します。
例えば、
変更前
本番 + 開発
変更後
本番のみを比較すると、変更後の方が安く見えても、
最適化による削減とは限りません。
単に比較対象が減っている可能性があります。
したがって、
変更前
と
変更後で同じ対象範囲を再現できるようにします。
3. 比較可能な期間を固定する
比較期間も揃えます。
例えば、
先月
1日〜30日
90万円
今月
1日〜10日
40万円をそのまま比較して、
50万円削減とは判断できません。
また、ワークロードに、
週末バッチ
月末処理
定期集計などがある場合は、その業務サイクルを含む期間かも確認します。
ベースラインには、
どの期間を
比較基準として使用したかを残します。
4. 現在コストを基準値として残す
対象範囲と期間を固定したら、その条件で現在コストを記録します。
例えば、
対象
本番アカウント
期間
8月1日〜8月31日
現在コスト
100万円です。
ただし、この100万円だけでベースラインを完成とはしません。
後から変化理由を確認できるように、
サービス別コスト
使用量
コスト推移
主要なコスト要因も同じ基準へ紐付けます。
5. サービス別コストを同じ基準へ紐付ける
例えば、
| サービス | 月額コスト |
|---|---|
| Amazon EC2 | 40万円 |
| Amazon RDS | 25万円 |
| Amazon S3 | 10万円 |
| ネットワーク関連 | 15万円 |
| その他 | 10万円 |
のように、現在コストを主要サービスへ分解した結果を残します。
ここでサービス別コストの分析方法を再講義するのではなく、
変更前のサービス構成を
後から比較できる状態にするために記録します。
6. 使用量も同じ期間・範囲で残す
コストと対応する主要な使用量も記録します。
例えば、
Amazon EC2
コスト
+
実行時間
Amazon S3
コスト
+
保存量 / リクエスト量
ネットワーク
コスト
+
転送量です。
重要なのは、
変更前コストと、
変更前使用量を同じ期間・対象範囲で残すことです。
これにより変更後に、
コストが下がった
同時に使用量も下がったのか、
使用量は同程度
コストだけ下がったのかを比較できます。
7. コスト推移を基準へ含める
単一時点だけでなく、その期間のコスト推移もベースラインへ残します。
例えば、
1月 80万円
2月 82万円
3月 81万円
4月 130万円であれば、
4月だけ通常状態と異なることが分かります。
一方、
1月 80万円
2月 90万円
3月 100万円
4月 110万円なら、
継続的に増加している状態です。
このページでは増加原因を最終決定せず、
変更前にどの推移だったかを比較材料として保存します。
8. 一時的なコストを通常状態と分ける
例えば、通常は、
100万円 / 月程度の環境で、
3月
140万円となったとします。
追加40万円が、
大規模データ移行による一時的な料金なら、
通常運用
100万円
一時的要因
+40万円
データ移行のように分けて記録します。
一時的な料金を請求データから削除するのではありません。
実際に発生したコストとして残しながら、
通常運用の基準とは異なる要因であることを説明可能にします。
9. 総額が同じでも内部構成を固定する
例えば、
| 先月 | 今月 | |
|---|---|---|
| Amazon EC2 | 50万円 | 35万円 |
| Amazon S3 | 20万円 | 20万円 |
| ネットワーク関連 | 10万円 | 25万円 |
| その他 | 20万円 | 20万円 |
| 合計 | 100万円 | 100万円 |
総額は変わっていません。
しかし、
Amazon EC2
-15万円
ネットワーク関連
+15万円という内部変化があります。
そのためコストベースラインでは、
総額
+
サービス別コスト
+
対応する使用量
+
推移を同時に残します。
10. 主要なコスト要因を記録する
ベースラインには、
どの項目が
現在の総額や変化へ
大きく影響しているかも記録します。
例えば、
Amazon EC2
50万円
ほぼ一定
ネットワーク関連
10万円
↓
20万円
↓
35万円なら、
現在最も高額なサービスと、
最近の変化を大きく動かしている要因は同じとは限りません。
このページでは最適化方法までは選ばず、
後続分析で確認すべき
主要なコスト要因として残します。
11. 同じ分析条件を再現できるようにする
ベースラインでは、
対象範囲
+
対象期間
+
その分析に使用した条件を、変更後も再現できるように記録します。
重要なのは、変更前と変更後で、
比較対象そのものが変わっていないことです。
AWS Cost Explorerなど既習のコスト分析機能は、同じ条件で値を再取得するための手段として利用します。
12. ベースラインとして残す情報
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 対象範囲 | アカウント、ワークロード、リージョンなど |
| 対象期間 | 比較に使用した期間 |
| 現在コスト | 対象範囲全体のコスト |
| サービス別コスト | 主要サービスごとのコスト |
| 使用量 | コストに対応する主要な利用量 |
| コスト推移 | 日次・月次などの変化 |
| コスト要因 | 総額や変化へ大きく影響する要因 |
| 例外 | 移行・検証などの一時的要因 |
| 比較条件 | 変更後も再現する同じ分析条件 |
この1セットが、
最適化前の再現可能な基準になります。
13. 後続分析へ渡す
このページでは、
高い
=
無駄とは判断しません。
例えば、
Amazon EC2
最大コストと分かっても、
使用率が低い
過剰プロビジョニングとはまだ判断できません。
同様に、
オンデマンド料金が大きいとしても、ここではReserved InstancesやSavings Plansを選びません。
このページで行うのは、
現在状態を
比較可能なコストベースラインとして確定するところまでです。
14. コストベースライン作成の流れ
既存AWS環境
↓
対象範囲を固定
↓
比較可能な期間を固定
↓
現在コストを記録
↓
サービス別コストを記録
↓
対応する使用量を記録
↓
コスト推移を記録
↓
主要なコスト要因を記録
↓
一時的な例外を分離
↓
同じ分析条件を保存
↓
コストベースライン完成15. 混同ポイント
| 誤った判断 | コストベースラインでの判断 |
|---|---|
| 合計請求額だけ保存する | サービス別コスト・使用量・推移も残す |
| 今月途中と先月全体を比較する | 比較可能な期間へ揃える |
| 一時的なコストを通常運用として扱う | 通常状態と分けて理由を残す |
| 一時的な料金を分析から削除する | 発生事実は残し、例外として分類する |
| 総コストが同じなら変化なし | 内部のサービス構成や使用量も比較する |
| 最適化前後で対象範囲が違ってもよい | 同じ対象範囲・条件を再現する |
| 高コストならすぐ改善する | このページでは事実を固定し、改善判断は後続へ残す |
16. SAP-C02での判断フロー
既存環境の
コスト最適化を開始
↓
対象範囲は?
↓
比較期間は?
↓
現在コストは?
↓
サービス別コストは?
↓
対応する使用量は?
↓
コスト推移は?
↓
主要なコスト要因は?
↓
一時的な例外は?
↓
同じ分析を再現できる
比較条件を保存
↓
コストベースライン完成
↓
後続の最適化機会分析へ17. このページで扱わないこと
ここでは、
過少利用 / 過剰利用判定
未使用リソース判定
適正サイジング
AWS Compute Optimizerの推奨評価
Reserved Instances
Savings Plans
Spot Instances
データ転送経路の最適化
AWS Cost and Usage Reportの
明細レベル分析
コスト配分タグ設計
AWS Budgets
請求アラーム
Cost Anomaly Detection
最終的なコスト改善施策の選択は扱いません。
このページで完成させるのは、
既存環境の現在状態
↓
比較可能で
再現可能な
コストベースラインです。
まとめ
コストベースラインは、
現在100万円 / 月という1つの数字ではありません。
対象範囲
対象期間
現在コスト
サービス別コスト
対応する使用量
コスト推移
主要なコスト要因
一時的な例外
比較条件をまとめた、最適化前の再現可能な基準です。
この基準があることで、変更後に、
何が
どれだけ
なぜ
変化したかを同じ条件で比較できます。
主要AWS公式資料
- AWS Certified Solutions Architect - Professional(SAP-C02)試験ガイド — タスク 3.5
- AWS Cost Explorer — Exploring your data
- AWS Cost Explorer — Filtering the data that you want to view
- AWS Cost Explorer — Using the Cost Explorer chart
- AWS Cost Explorer — Comparing your costs between time periods
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