試験項目 2.2 · CCNA-055
Power over Ethernet(PoE)
ドメイン 2 · Switching and Network Access · Edge Host Layer 2 Switch Port Configuration
1. このページのゴール
エッジデバイスの給電要件に応じてPoEモードを選択し、給電状態・割当電力・電力予算を確認できるようにする。
2. このページで学ぶこと
- PoE要件
power inline autopower inline staticpower inline never- 受電機器の検出
- PoE電力割り当て
- スイッチPoE電力予算
show power inline
3. Power over Ethernet(PoE)とは
Power over Ethernet(PoE)は、Ethernetケーブルを利用してデータ通信とともにエンドポイントへ電力を供給する仕組みです。
スイッチ側から電力を供給し、接続されたデバイスがその電力を受け取る構成を考えます。
代表的な利用イメージは、
PoE対応スイッチ
|
| Ethernet
| データと電力
|
受電機器
です。
PoEを利用する場合、ネットワークエンジニアは単にEthernetリンクが接続されているかだけではなく、
エンドポイントはPoE給電を必要とするか
スイッチポートは給電可能な設定か
受電機器を認識しているか
必要な電力がポートへ割り当てられているか
スイッチ全体に利用可能な電力が残っているか
を確認します。
4. PSEと受電機器
PoEでは、電力を供給する側と受け取る側を区別します。
スイッチのPoEポートなど、電力を供給する側は給電機器(PSE)として動作します。
Ethernet経由で電力を受け取るデバイスは受電機器(PD)と呼ばれます。
概念的には、
PSE
PoEスイッチ
|
| 電力とデータ
|
PD
受電機器
です。
CCNA問題では、細かな電源回路を解析するのではなく、
スイッチが給電側
エンドポイントが受電側
スイッチがPDを検出
必要な電力を割り当て
給電状態を確認
という関係を押さえます。
5. 最初にPoE要件を確認する
エッジポートを設計するときは、エンドポイントがEthernet経由の給電を必要としているかを確認します。
たとえば要件に、
エンドポイントはEthernet経由でスイッチから給電を受ける必要がある。
とあれば、PoEが必要です。
一方、
エンドポイントは外部電源を使用する。
スイッチポートからPoE給電してはならない。
という要件なら、スイッチポートからのPoE給電を禁止する設計が候補になります。
重要なのは、
デバイス名
↓
給電方法を決める
のではなく、
電力要件
↓
PoEモードを決める
という順序です。
6. PoEモードを要件から選ぶ
ここでは、代表的な次の3つを区別します。
| モード | 基本的な考え方 |
|---|---|
power inline auto |
PDを検出し、利用可能な電力があれば給電する |
power inline static |
ポート向けの電力をあらかじめ確保する必要がある設計で使用する |
power inline never |
そのポートからPoE給電しない |
どれを選択するかは、エンドポイントの給電要件とスイッチ側の電力設計によって決まります。
7. power inline auto
通常の自動PoE給電では、代表的に、
interface GigabitEthernet1/0/10
power inline auto
を使用します。
autoでは、スイッチが接続先を確認し、受電機器を検出して、利用可能な電力があれば給電します。
考え方は、
ポート
↓
PD検出
↓
電力利用可能
↓
電力割り当て
↓
給電
です。
たとえば要件が、
Ethernet経由で受電するエンドポイントを接続する。
通常の自動PoE給電を使用する。
なら、
power inline auto
が要件に対応します。
8. autoだから必ず給電できるとは限らない
ポートが、
power inline auto
になっていても、実際にエンドポイントへ電力が供給されるとは限りません。
給電には、
受電機器を正しく検出できること
ポートに必要な電力を割り当てられること
スイッチ全体に利用可能なPoE電力があること
などが関係します。
そのため、
設定済みモード = auto
だけを見て、
給電 = 正常
とは判断しません。
設定と動作上の電力状態を分けて確認します。
9. power inline static
特定ポート用に電力を確保する必要がある設計では、代表的に、
interface GigabitEthernet1/0/10
power inline static
を使用できます。
staticでは、ポートに対して電力をあらかじめ割り当てる考え方になります。
つまり、
auto
→ PDを検出して必要な給電を行う通常の自動動作
static
→ ポート用電力を予約する必要がある設計
という違いを押さえます。
CCNA問題で、
特定ポート向けの電力をあらかじめ確保する
という要件があれば、staticが判断候補になります。
10. power inline never
スイッチポートからPoE給電を行わない要件では、
interface GigabitEthernet1/0/10
power inline never
を使用できます。
これはそのインターフェースでPoE給電を無効にする方向の設定です。
たとえば、
ポート-Bではスイッチから電力を供給してはいけない
という要件なら、
power inline never
が対応します。
ここで、
never
はポートをレイヤ2通信そのものに使用できなくするコマンドではありません。
PoEによる給電設定と、Ethernetインターフェースのデータリンク状態は分けて考えます。
11. データリンク状態とPoE給電状態を分ける
PoEトラブルシューティングでは非常に重要な考え方です。
Ethernetリンク状態
と、
PoE給電状態
は同じ情報ではありません。
たとえば外部電源を持つデバイスなら、
Ethernetリンク
→ up
PoE
→ 給電していない
という状態もあり得ます。
反対に、PoEで動作するエンドポイントが十分な電力を受け取れなければ、そのデバイス自体が起動できず、結果的にリンクが成立しないこともあります。
したがって、
リンクがdown
=
必ずPoE故障
でも、
リンクがup
=
必ずPoE給電正常
でもありません。
それぞれの状態を確認します。
12. 受電機器の検出
power inline autoなどでPoEを使用するとき、スイッチは接続先がPoEで受電可能な受電機器かを確認します。
この過程をトラブルシューティングするときは、
ポートはPoEを許可しているか
スイッチはPDを認識しているか
動作上の電力状態はどうなっているか
を確認します。
たとえばエンドポイントが起動しない場合、
ケーブルが接続されている
だけでは給電成功とは判断できません。
スイッチ側で受電機器として認識されているかを確認します。
13. show power inline
PoE状態を確認するときの代表的なコマンドが、
show power inline
です。
このコマンドでは、プラットフォームやソフトウェアバージョンによって表示項目は異なる場合がありますが、代表的に、
インターフェース
管理上のPoEモード
動作上のPoE状態
使用電力
検出されたデバイス
電力クラスや最大割当値に関する情報
などを確認できます。
CCNAでは、細かなクラス値をすべて暗記するよりも、
どのポートが給電しているか
どのポートが給電していないか
どのデバイスが検出されているか
どれだけ電力が割り当てられているか
を出力から判断することが重要です。
14. show power inlineの読み方
代表的なイメージを考えます。
Switch# show power inline
Available:370.0(w) Used:15.4(w) Remaining:354.6(w)
Interface Admin Oper Power Device Class Max
(Watts)
--------- ------ ---------- ------- ------------------- ----- ----
Gi1/0/10 auto on 15.4 Ieee PD 0 30.0
Gi1/0/11 auto off 0.0 n/a n/a 30.0
Gi1/0/12 off off 0.0 n/a n/a 30.0
表示形式や値はプラットフォームによって異なる場合がありますが、判断の考え方は共通です。
Gi1/0/10:
管理状態
→ auto
動作状態
→ on
電力
→ 割当あり
なので、PoE給電が行われている状態と判断できます。
Gi1/0/12:
管理状態
→ off
動作状態
→ off
であれば、設定上PoE給電を無効にしているポートであることを示します。
この場合、実行中設定では代表的に、
power inline never
が設定されます。
つまり、
設定コマンド
→ `power inline never`
show power inline の管理状態表示
→ off
のように、設定コマンド名と動作状態の出力上の表示値を分けて読みます。
15. 管理上の電力状態と動作上の電力状態
PoEでも設定済み状態と動作状態を分けます。
たとえば、
管理状態
→ auto
は、
このポートは自動給電する設定
を表します。
一方、
動作状態
→ off
なら、
現時点では給電中ではない
ことを示します。
したがって、
管理状態 = auto
だけで、
エンドポイントへ電力が届いている
とは判断しません。
試験では、
設定済みPoEモード
と
動作上のPoE状態
を照合します。
16. 電力割り当て
受電機器を給電するには、スイッチ側からポートへ必要な電力を割り当てられる必要があります。
概念的には、
PDが必要とする電力
↓
スイッチがポートへ電力を割り当て
↓
ポートから給電
です。
PoEデバイスが検出されていても、スイッチ側で必要な電力を確保できなければ、期待した給電状態にならない場合があります。
そのためトラブルシューティングでは、
PD検出
と、
電力割り当て
を別々に確認します。
17. 検出成功と割り当て成功を分ける
次のような状況を考えます。
スイッチ
↓
PDを認識している
↓
しかし十分な電力を割り当てられない
この場合、
受電機器の検出
→ 成功
でも、
給電
→ 期待どおりではない
可能性があります。
したがって、
デバイスが見えている
=
給電に必要な条件がすべて満たされている
とは判断しません。
18. スイッチPoE電力予算
PoEスイッチには、スイッチ全体として給電に利用できる電力があります。
複数の受電機器を接続すると、それぞれのポートが電力を消費します。
概念的には、
スイッチPoE電力予算
│
├─ ポート1への割り当て
│
├─ ポート2への割り当て
│
├─ ポート3への割り当て
│
└─ 残り電力
です。
そのため、新しいPoEデバイスを追加したときに給電できない場合、
そのポートの設定
だけでなく、
スイッチ全体の利用可能電力
も確認します。
19. ポート単体が正しくても電力予算不足は起こり得る
たとえば対象ポートが、
power inline auto
であり、接続されたデバイスもPoE対応だとします。
それでもスイッチ全体で利用可能なPoE電力が不足していれば、新しいポートへ必要な電力を割り当てられない可能性があります。
したがって、
ポート設定
→ 正しい
だけでトラブルシューティングを終了しません。
次に、
PD検出
ポート電力割り当て
スイッチ電力予算
を確認します。
20. 個別ポートとスイッチ全体を分ける
PoE問題は、次の2段階に分けると整理しやすくなります。
ポートレベル
確認するもの:
PoEモード
受電機器の検出
動作上の電力状態
ポートへの電力割り当て
スイッチレベル
確認するもの:
総電力
使用・割り当て済み電力
残り電力
この区別を使うと、
ポート固有の問題
なのか、
スイッチ全体の電力不足
なのかを切り分けやすくなります。
21. シナリオ1:通常の自動PoE給電
要件:
IPカメラはEthernet経由で給電する。
通常の自動PoE給電を使用する。
この要件なら、代表的な設定は、
interface GigabitEthernet1/0/10
power inline auto
です。
判断は、
Ethernet経由で受電
と
通常の自動給電
↓
power inline auto
となります。
設定後は、
show power inline
で実際の給電状態を確認します。
22. シナリオ2:電力を予約するポートと給電禁止ポート
要件:
ポート-A
→ デバイス用電力をあらかじめ確保する
ポート-B
→ スイッチからPoE給電してはいけない
判断:
ポート-A
→ `power inline static`
ポート-B
→ `power inline never`
です。
ポートごとの電力要件を読み、モードを選びます。
23. シナリオ3:エンドポイントが起動しない
エンドポイントがPoEで起動する設計なのに、デバイスが起動していないとします。
ポート設定:
interface GigabitEthernet1/0/10
power inline auto
ここで、
autoだから設定は正しい
だけで終了しません。
次に、
show power inline
を確認し、
受電機器を検出しているか
動作上の電力状態はどうか
ポートへ電力が割り当てられているか
を調べます。
つまり、
設定
↓
検出
↓
割り当て
↓
動作状態
の順に確認します。
24. シナリオ4:新しいPoEデバイスだけ給電できない
既存のPoEデバイスは正常に動作しています。
新しく追加したデバイスのポートも、
power inline auto
になっています。
しかし、新しいデバイスへ必要な電力が割り当てられません。
この場合、
ポートがautoか
だけを繰り返し確認するのではなく、
スイッチPoE電力予算
を確認します。
複数ポートですでに多くの電力を使用している場合、スイッチ全体の残り電力が原因候補になります。
判断の流れは、
ポートモード
→ auto
PD検出
→ 確認
電力割り当て
→ 不足
スイッチ電力予算
→ 確認
です。
25. シナリオ5:リンクは正常だがPoEは無効
次の状態を考えます。
Ethernetリンク
→ up
PoE設定
→ `power inline never`
外部電源で動作しているエンドポイントなら、データ通信が成立していてもPoE給電は行われていない構成があり得ます。
この場合、
リンクがup
から、
PoEもon
とは判断できません。
電力状態は、
show power inline
などで別途確認します。
26. モード選択の考え方
PoEモードを選ぶときは、まず要件を読みます。
通常の自動給電
PDを検出して必要に応じて給電
なら、
power inline auto
ポート向け電力を予約する設計
特定ポート用の電力をあらかじめ確保
なら、
power inline static
給電禁止
このポートからPoE給電しない
なら、
power inline never
という方向で判断します。
27. show power inlineで確認する順序
PoEの確認では、次のように出力を読みます。
1. 対象インターフェースを確認
2. 管理上のPoEモードを確認
3. 動作上の電力状態を確認
4. 受電機器の検出を確認
5. ポートへ割り当てられた電力を確認
6. 必要ならスイッチ全体の電力予算を確認
この順序にすると、
設定ミス
PD検出の問題
電力割り当ての問題
スイッチ電力予算の問題
を分けて考えやすくなります。
28. よくある誤り
autoなら必ず給電すると考える
power inline autoは自動給電するための設定ですが、PD検出や利用可能な電力などの条件も関係します。
動作状態を確認します。
リンク状態だけでPoE状態を判断する
Ethernetリンク状態とPoE給電状態は別の観点です。
show interfaces
などでリンクを確認することと、
show power inline
でPoEを確認することは目的が異なります。
受電機器を検出したら給電成功と判断する
検出と電力割り当ては別の確認項目です。
デバイスを検出できていても、必要な電力を割り当てられるかは別途確認します。
ポート設定だけを確認する
新しいPoEデバイスへ給電できない場合、ポート単体だけでなくスイッチ全体のPoE電力予算も原因候補になります。
PoE規格ごとの数値だけを暗記する
この範囲では、細かなクラスやワット値を網羅的に暗記することより、
給電要件
↓
モード
↓
検出
↓
割り当て
↓
電力予算
↓
確認
という判断の流れを理解することが重要です。
29. 問題での判断パターン
パターン1:PoEが必要か判断する
要件:
エンドポイントはEthernetケーブル経由で受電する。
判断:
PoE要件
→ あり
パターン2:通常の自動給電
要件:
受電機器を検出し、
利用可能な電力があれば自動給電する。
コマンド:
power inline auto
パターン3:電力を予約する
要件:
特定ポート向けに電力を確保する。
コマンド:
power inline static
パターン4:PoEを禁止する
要件:
ポートからPoE給電してはいけない。
コマンド:
power inline never
パターン5:受電機器の検出
症状:
PoEで動作するエンドポイントが起動しない。
確認:
show power inline
から、スイッチが受電機器を認識しているか確認します。
パターン6:電力割り当て
条件:
PDは認識されている。
しかし期待した電力が供給されていない。
次に確認:
ポートへ電力が割り当てられているか
です。
検出成功だけで給電成功と判断しません。
パターン7:スイッチPoE電力予算
条件:
既存PoEデバイスは正常。
新しいデバイスだけ必要電力を確保できない。
確認候補:
スイッチ全体のPoE電力予算
です。
パターン8:show power inline
確認したい内容:
PoEモード
動作上の電力状態
受電機器
割り当て済み電力
代表コマンド:
show power inline
30. 複合問題での判断
次のシナリオを考えます。
Gi1/0/10へPoE対応エンドポイントを追加した。
ポート設定:
power inline auto
エンドポイントは起動しない。
このとき、
autoが設定済み
だけを理由にスイッチ側PoEが正常とは判断しません。
確認順は、
show power inline
↓
管理モードを確認
↓
動作状態を確認
↓
PD検出を確認
↓
電力割り当てを確認
↓
スイッチ電力予算を確認
です。
もし、
PD検出
→ 正常
ポートへの必要電力
→ 割り当て不可
なら、スイッチ全体の電力予算が次の確認対象になります。
このように、PoEトラブルシューティングでは、
設定済みモード
と、
実際の給電状態
を分けて判断します。
31. 確認手順
PoE対応エッジポートを設定・確認するときは、次のような流れで整理できます。
エンドポイントの電力要件
↓
PoE要否を判断
↓
PoEモードを選択
↓
power inline ...
↓
show power inline
↓
PD検出
↓
動作上の電力状態
↓
電力割り当て
↓
スイッチ電力予算
問題で重要なのは、
どのコマンドを設定するか
だけではありません。
設定後に何を確認し、
どの状態から原因を判断するか
まで理解します。
32. まとめ
PoEでは、Ethernetケーブルを通じてエンドポイントへ電力を供給できます。
エッジポートでは、まず、
エンドポイントはPoEを必要とするか
という要件を確認します。
代表的なモードは、
power inline auto
→ PDを検出して自動給電
power inline static
→ ポート向け電力を確保する設計
power inline never
→ PoE給電を行わない
という方向で区別します。
設定後は、
show power inline
を使用して、
設定済みPoEモード
動作上の電力状態
受電機器の検出
電力割り当て
を確認します。
power inline neverが設定されているポートでは、show power inlineのAdmin列がoffと表示されるプラットフォームがあります。設定コマンドと表示値を同じ文字列だと決めつけず、出力の意味を読み取ります。
個別ポートの設定に問題がなくても、新しい受電機器へ必要な電力を割り当てられない場合は、
スイッチ全体のPoE電力予算
も確認します。
CCNA問題では、
電力要件
↓
モード選択
↓
PD検出
↓
電力割り当て
↓
スイッチ電力予算
↓
動作状態確認
という順序で整理すると、ポート設定と実際の給電状態を混同しにくくなります。
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